2024年10月29日
利根中央病院
感染管理認定看護師
松井奈美
コロナ禍では感染対策が徹底され、それまで流行していた感染症も息をひそめました。感染症法上の取り扱いが5類感染症に移行し、様々な感染症が再び流行しています。
そこで冬に多い感染症について振り返り、感染しない、また人に感染させない知識を身に着けておきましょう。冬に流行する感染症は、インフルエンザやRSウイルスなどの呼吸器感染症とノロウイルスなどの感染性胃腸炎があります。さらに新型コロナウイルスは、夏と冬に流行を繰り返しておりこの冬も多くなることが予想されます。
感染予防の基本は、「手洗い」「咳エチケット」の実施、そして「症状がある時は自宅で過ごす」ことで周囲への感染を防ぎましょう。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスにはA.B.Cの型があり、流行するのはA型とB型です。
インフルエンザに感染すると1~3日の潜伏期間の後に発熱、頭痛、全身倦怠感、関節痛などが突然現れ、その後咳や鼻水など上気道症状が続き1週間程度で軽快します。日常かかる「かぜ」と比較して全身症状が強く、高齢者や慢性疾患・基礎疾患を持つ方は入院が必要なこともあります。また小児では急激に悪化する急性脳症を起こす危険性があります。インフルエンザは、治療薬があり発症後48時間以内に抗ウイルス薬を使用すると発熱期間が短縮されます。また重症化予防のためワクチンが有効です。
感染経路のひとつには目や鼻、口に直接ウイルスがとんでくる飛沫感染があります。もう一つは手についたウイルスを目や鼻を触って体に入れる接触感染があります。予防は、流行期は人ごみを避ける、避けられない場合はマスクを着用する(咳エチケット)、外出後はうがいや手洗いを行うことです。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスに感染すると、のどの痛み、咳、鼻水・鼻づまり、身体のだるさ、発熱、筋肉痛などの症状がでます。通常発症後1週間程度で軽快しますが、高齢者や基礎疾患のある方は重症化や肺炎を引き起こし入院が必要な場合もあります。
新型コロナウイルスは、感染した人のせきやくしゃみ、会話でウイルスが排出され、周囲の人の目や鼻、口からウイルスが入ります。特徴は、発症(ウイルスが身体に入って感染し症状がでた状態)する前にウイルスを多量に排出し、また感染しても症状が出ないことがあります。そのため知らずに人に感染させてしまいます。周囲の人に広げないよう、医療機関や高齢者施設の訪問の際、公共交通機関利用の際はマスクをしましょう。感染したら、発症後5日間程度外出を控えることが推奨されています。
学校保健安全法では「発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで」出席停止となります。「新型コロナウイルスに感染したかも?」と思ったら、ご自身で検査キットを使用して感染を確認しても問題ありません。また5日間自宅療養し症状が良くなったら通常の生活に戻ることも選択肢の一つです。予防には手洗い、咳エチケットと流行期には換気を行う、人ごみを避けることです。
高齢者の方は、重症化予防のためにワクチン接種もご検討ください。
感染性胃腸炎 ノロウイルス
食中毒は1年を通して発生しますが、特に冬になるとノロウイルスによる食中毒が増えます。
ノロウイルスは感染力が強く、アルコールが無効という特徴があり消毒には塩素系漂白剤などが使用されます。
感染すると発熱、嘔吐・下痢などの症状があり、3日程度でよくなりますが、高齢者や小さなお子さんは重症化することがあり注意が必要です。その反面、症状が軽く感染していることに気付かない人もいます。
ノロウイルス対策は、「持ち込まない」「つけない」「やっつける」「広げない」ことです。「持ち込まない」ために日頃から手洗いを行い、腹痛や下痢などの症状がある時は食品を扱わない。「つけない」ためには、調理を行う際は十分な手洗いを行う。「やっつける」ためには、料理の際は十分に火を通す(中心温度85度以上、90秒以上の加熱)、調理器具はしっかり洗う、消毒を行う。「拡げない」ために、嘔吐物やおむつの処理の際に感染しないようにすること。嘔吐物処理は図をご参照ください。
もしもに備えて嘔吐物処理に必要な物を準備し、あわてないで片付けましょう。いずれにしても石けんによる手洗いが重要な感染対策になります。