肺がんについて

2024年12月01日

利根中央病院
外科医長
浦部貴史

肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると転移することもあり、転移しやすい場所はリンパ節や、肺の中のほかの部位、胸膜、骨、脳、肝臓、副腎などです。
今回は肺がんについて説明します。

2022年の日本の統計で肺がん死亡者は約75000人と全体のがんの中で1位になっています。2位の大腸がんの約53000人と比べはるかに多い数です。男女の割合は男性が約53000人、女性が約22000人と男性に多くなっています。また男性の中では1位の死亡数となっており、2位の大腸がんの約2倍近くの数となっています。女性では1位の大腸がんよりわずかに少ない2位になっています。

罹患数も多く、2020年の統計で全体は約121000人、男性では約81000人の罹患者がおり、これは前立腺、大腸よりわずかに少ない3位となっています。女性では約40000人となっており、乳房、大腸に次ぐ3位になっています。罹患数に対して死亡数が比較的多いがんになります。年齢別の人口に対しての罹患率を見ると50代から徐々に増えはじめ、年齢が上がるにつれ増加傾向にあります。

肺がんの主な組織型(がんの種類)は多い順に腺がん、 扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんです。治療法が組織型により大きく異なるため、「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に大きく分けて扱います(表1)。
がんの発生要因の1つに喫煙があり、扁平上皮がんや小細胞がんは関連が大きいです。しかし近年は喫煙をしていない人でも肺がんになる人が増えてきており注意が必要です。

表1 主な肺がんの組織型とその特徴
国立がん研究センター がん情報サービスパンフレット123「肺がん 受診から診断、経過観察への流れ」より
表1 主な肺がんの組織型とその特徴
国立がん研究センター がん情報サービスパンフレット123「肺がん 受診から診断、経過観察への流れ」より

症状・検査・治療

肺がんの症状は、早期には特に見られないことも多く、進行して初めて症状が出ることもあります。主な症状としては、咳や痰、血痰、胸の痛み、息切れや動悸、発熱、嗄声(させい)があげられます。これらは必ずしも肺がんに特有のものではなく、肺炎などの感染症でも起こります。症状が続く場合などには精密検査が必要になります。
検査としては、主に胸部単純X線写真(レントゲン)や胸部CT検査があります。肺がんの疑いがある場合は、気管支鏡検査、喀痰細胞診、CTガイド下生検、胸腔鏡検査、外科的生検(手術での生検)などで組織を取って確定診断を行います。転移の有無を調べるためにMRI検査やPET-CT検査が行われることもあります。

治療については大きく分けて手術・放射線・薬物療法があり、組織型・病期(Ⅰ〜Ⅳ期)よって、それぞれを選択または組み合わせて治療をします。
非小細胞がんでは、Ⅰ期、Ⅱ期で原則として手術療法が選択され、追加で薬物療法を行うことがあります。Ⅲ期では病状に応じて手術・放射線・薬物療法を組み合わせて治療が行われ、Ⅳ期では原則として薬物療法が行われます。

小細胞がんでは原則として薬物療法を行いますが、がんが限局した部位にある場合には手術療法や放射線療法を併用する場合があります。今回はこの中でも手術療法について詳しく説明します。

手術療法

手術療法は、がんを切り取る治療法で根治を目的として行います。手術の種類としては肺全摘、肺葉切除、区域切除、部分(楔状)切除が主に行われており病期などによって選択されます(図1)。肺への到達方法には、皮膚を15〜20cmほど切開し、肋骨の間を開いて行う開胸手術と、皮膚を小さく数カ所切開して、胸腔鏡というビデオカメラを挿入し、主にモニターの画像を見ながら行う胸腔鏡手術があります。それぞれの方法に長所、短所があり、施設によって方法や適応が異なっており、標準化は難しいのが現状です。当院では元々胸腔鏡をメインに手術を行っており、筆者は今年度当院に復帰するまでの2年間を、がん研究会有明病院で低侵襲かつ確実性・安全性の高い最先端の胸腔鏡手術を学んできました。手術である以上、100%安全というわけにはいきませんが、安心して手術を受けていただきたいと思います。

図1 肺がんの手術と術後の状態
「肺がん 受診から診断、経過観察への流れ」より
図1 肺がんの手術と術後の状態
「肺がん 受診から診断、経過観察への流れ」より

最後に

前項にもあるように、肺がんは他のがんと比べ罹患数に対しての死亡数が多くなっています。原因の一つに症状が出にくい、レントゲン検診のみでは早期発見が難しいということが考えられます。そのため、比較的進行した状態で発見・治療が始まることもあり、根治が難しいという可能性があります。早期発見にはレントゲン検査だけでなくCT検査が有用であり、当院の健診センターでもCT検診を行なっています。心配な方はぜひ受けていただき、なにか不安があれば専門科に受診していただくことが重要になります。

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